HANDS-ON / 午後 ワークショップ

運用業務の文章をチャットAIで下書きする

月次報告書・運用手順マニュアル・障害一次報告の3つを題材に、チャットAIで下書きを作る流れを体験します。題材のデータはすべて架空です。コピーして自分のチャット画面に貼り付けて使ってください。

2026年7月24日(金)・オンライン
各演習 考える→書く→実行→振り返る
使うのは Microsoft 365 Copilot(ブラウザ)
午後のながれ
演習1

月次報告書の整形35分

箇条書きのメモを、お客様向けの月次運用報告に整える。

演習2

運用手順マニュアルの草案45分

頭の中の手順を、新人が一人で追える手順書にする。

演習3

障害一次報告のドラフト45分

限られた事実から、関係者向けの一次報告を素早く出す。

まとめ

自分の業務での活用箇所50分

明日いちばん最初に試すことを一つ書き出して持ち帰る。

HANDS-ON 01

このワークの進め方

3つの演習を順番に進めます。どの演習も「考える → 書く → 実行する → 振り返る」の4段で組み立てています。いきなりAIに丸投げせず、まず自分で考えてから指示を書くのがコツです。

考える
何を作るか整理
書く
指示文を組み立てる
実行する
送って直す
振り返る
使いどころをメモ
本物のデータは貼らないでください

本書の題材はすべて架空のダミーです。練習では必ずこのダミーを使ってください。実際の顧客情報や社外秘の情報をチャットに貼ってよいかは、貴社の社内ルールに従ってください。

答え合わせの完成例について

各演習の最後に、講師用の完成例(hints フォルダ)と見比べる手順があります。先に完成例を見ると考える練習になりません。自分で手を動かしてから開いてください。

入力は貼り付けでもファイル添付でも

本書はメモを貼り付けて進めますが、Microsoft 365 Copilot ではメモをファイルにして添付しても同じことができます。長い資料ほど「+」からの添付が楽です。

テクニックを足して自分用にカスタム

各演習には、基本形ができたあとに役割・段階的な指示(CoT)・メタプロンプトといったテクニックを一つ足して、自分の仕事に合わせて変えてみる一歩を用意しています。まず基本形を動かしてから挑戦してください。

HANDS-ON 02

演習1 ― 月次報告書の整形

一か月分の作業メモを、お客様にそのまま出せる月次報告の文章に整える演習です。箇条書きを整った文章にする、という生成AIが最も得意な作業から始めます。

HANDS-ON 1作業メモを月次報告に整形する(約20分)
1
考える

お客様が読む月次報告には、何が書いてあると安心しますか。実施した作業、発生した事象とその対応、来月の予定。この3点が入っていれば形になります。下のダミーメモを材料にします。

対象: [架空]みなと物流システム 月次運用報告 2026年6月分 担当: 運用チーム ・サーバ定期メンテ 6/8深夜 実施 問題なし ・ディスク使用率アラート 6/14 80%超え 不要ログ削除で対応 現在62% ・バックアップ 毎週日曜 全て成功 ・問い合わせ 月3件 いずれも操作方法の質問 当日中に回答 ・来月: 7/12にOSパッチ適用予定 事前に連絡する
2
書く

次の指示文をコピーし、上のメモを続けて貼り付けてチャットに送ってください。役割・出力の形・読み手を指定しているのがポイントです。

あなたはシステム運用の報告書を書く担当者です。 次の作業メモを、お客様向けの月次運用報告の文章に整えてください。 条件: - 「今月の実施作業」「発生した事象と対応」「来月の予定」の3つの見出しに分ける - 敬体(です・ます)で、簡潔に - アラート対応は、現在は問題ない旨が伝わるように書く 作業メモ: (ここに上のメモを貼り付け)
3
実行する

返ってきた文章を読んで、気になる点を追加で直します。たとえば「冒頭に一文、全体として安定稼働だったことを足して」「専門用語をお客様にも分かる言葉に」と続けて頼んでみてください。一度で完成させず、2〜3回往復するのが狙いです。

4
振り返る

自分が普段書いている報告書のうち、このやり方で下書きを作れそうなものはありますか。思いついたら手元にメモしてください。完成例は hints/step01_report_example.html にあります。

カスタム テクニックで自分用にカスタム ― 役割と出力形式

基本の指示文が動いたら、テクニックを一つ足して自分用に変えてみましょう。役割(ペルソナ)を変えると文章のトーンが、出力形式を指定すると見た目が変わります。

■ 役割を変える(末尾に追記) あなたは、顧客に安心してもらうことを大切にする運用リーダーです。 専門用語は避け、最初に相手をねぎらう一文を入れてください。 ■ 出力形式を変える 報告は文章ではなく、「見出し/内容」の表の形で出してください。

試すこと:役割・トーン・出力の形をどれか一つ変えて再送し、同じメモでも文章の硬さや詳しさがどう変わるかを見比べてください。自分の現場に一番合う型を見つけるのが狙いです。

発展課題1 複数月比較レポートへの拡張

ねらい:同じ形式の月次メモが複数月分あるとき、月をまたいだ傾向をAIに読み取らせる練習です。

やること:下の7月分ダミーメモを、演習1で使った6月分メモと一緒に貼り付けて、次のように指示してください。

対象: [架空]みなと物流システム 月次運用報告 2026年7月分 担当: 運用チーム • サーバ定期メンテ 7/13深夜 実施 問題なし • ディスク使用率 7/10に再度70%超え 不要ログ削除で対応 現在55% • バックアップ 毎週日曜 全て成功 • 問い合わせ 月1件 操作方法の質問 当日中に回答 • 来月: 8/10にSSL証明書更新予定 事前に確認依頼済み
上の6月分と7月分の2か月を比較できる表にまとめてください。 ディスク使用率・問い合わせ件数・バックアップ結果の3項目を列にして、 改善傾向があれば表の下に一言コメントを添えてください。

確認ポイント:ディスク使用率の推移(80%→62%→70%→55%)が正しく読み取られているか、改善傾向のコメントが数値に基づいていて憶測になっていないかを確かめてください。

うまくいかないとき

長すぎる、固すぎると感じたら「半分の長さで」「もう少しやわらかい言い回しで」と頼みます。逆に内容が薄ければ「各項目に一言ずつ補足を足して」と指示します。

HANDS-ON 03

演習2 ― 運用手順マニュアルの草案作成

頭の中にある手順や、口頭で引き継いでいる作業を、誰でも読めるマニュアルの草案にする演習です。AIに手順の文章を起こさせ、抜けを補わせます。

HANDS-ON 2ざっくりした手順を読めるマニュアルにする(約25分)
1
考える

引き継ぎたい作業をひとつ思い浮かべてください。今回は題材として「ディスク使用率アラートが出たときの一次対応」を使います。ベテランの頭の中にある手順を、新人でも追える形にするのがゴールです。下のメモが材料です。

作業: [架空]ディスク使用率アラート一次対応 対象サーバ: web01〜web03([架空]社内ポータル基盤) メモ書き: - 監視ツールでアラート受けたらまず対象サーバ確認 - SSHでログインして df でディスク見る - だいたい古いログがたまってる /var/log/app の30日より前を消す - 消したらもう一回 df で減ったか確認 - 60%切ってればOK 切らなければリーダーに連絡 - 対応したら対応記録に時刻と内容を残す
2
書く

次の指示でマニュアルの草案を作らせます。読み手と「抜けを補ってほしい」点を明示しているのがコツです。

あなたは運用手順マニュアルを整備する担当者です。 次のメモを、運用に入って間もない新人でも一人で実施できる手順書の草案にしてください。 条件: - 番号付きの手順で、各手順は一文で簡潔に - 「前提・準備するもの」「手順」「完了の確認方法」「うまくいかないときの連絡先」に分ける - メモに書かれていないが安全のために必要そうな注意点があれば「補足」として提案する - 提案した補足は、現場で確認が必要な箇所だと分かるようにする メモ: (ここに上のメモを貼り付け)
3
実行する

返ってきた草案を読み、AIが補った注意点が妥当かを確かめます。「消す前にバックアップは要らないか確認したい」など、現場の判断が要る点が出てくるはずです。間違いや不要な手順があれば「この手順は不要なので削って」と直します。AIの提案を鵜呑みにせず、現場の目で取捨選択するのがこの演習の肝です。

4
振り返る

自分しか知らない手順、口頭でしか引き継いでいない作業はありませんか。それをこのやり方で文章化できそうか、メモしてください。完成例は hints/step02_manual_example.html にあります。

カスタム テクニックで自分用にカスタム ― 段階的に考えさせる(CoT)

手順書のように抜け漏れを防ぎたいときは、いきなり清書させず考える順番を指示すると精度が上がります。まず洗い出し、次に抜けの指摘、最後に清書、と段階を踏ませる書き方です。

■ 段階を踏ませる(指示の冒頭に追記) 次の順番で進めてください。 (1) まずメモから手順を箇条書きで洗い出す (2) 新人がつまずきそうな点・危険な点を指摘する (3) 指摘を反映して、番号付きの手順書に清書する ■ 読み手を変える 「深夜に一人で対応する新人」向けに、迷ったら誰に連絡するかを 各手順に添えて書き直してください。

試すこと:段階を踏ませたときと、いきなり清書させたときで、抜けの拾い方がどう変わるかを比べてください。読み手を変えると、同じ手順でも書き方が変わります。

発展課題2 別の対応手順への横展開

ねらい:演習2で作った手順書の構成を型として使い、別の一次対応にそのまま当てはめる練習です。指示の「流用」を体験します。

やること:演習2で使った指示文を再利用し、材料部分だけ下のダミーメモに差し替えて送ってください。「前提・準備」「手順」「完了の確認方法」「うまくいかないときの連絡先」の構成はそのまま維持してください。

作業: [架空]メモリ使用率アラート一次対応 対象サーバ: app01、app02([架空]社内申請システム) メモ書き: - 監視ツールでメモリ90%超えアラートを受けたら対象サーバを確認 - SSH でログインして top または free -h でメモリ使用を見る - だいたいログ集積プロセスが肥大化している - プロセスを特定して kill -9 で再起動 その後プロセスが立ち上がるか確認 - 使用率80%未満になればOK 下がらなければリーダーに連絡 - 対応したら対応記録に時刻・対象プロセス・対応内容を残す

確認ポイント:ディスク手順とメモリ手順で微妙に違う点(確認コマンド・しきい値・対象プロセスの特定方法)が正しく書き分けられているか確かめてください。一字一句コピーでなく題材に合った形になっているかが判断の軸です。

補足は提案であって正解ではありません

AIが足した注意点は、それらしく見えても現場の実態と違うことがあります。手順書として確定する前に、必ず実際の作業を知る人が確認してください。

HANDS-ON 04

演習3 ― 障害一次報告のドラフト

障害が起きた直後、限られた事実から関係者向けの一次報告を素早く出す演習です。急いでいる場面ほど、下書きを速く作れる効果が効いてきます。ただし事実の確認は人が行う前提を崩しません。

HANDS-ON 3事実メモから一次報告を起こす(約25分)
1
考える

一次報告で関係者が知りたいのは、何が起きたか・影響範囲・今どうしているか・次にいつ続報が出るか、の4点です。確定していないことは「調査中」と書く。憶測で原因を断定しないのが鉄則です。下のメモを材料にします。

事象: [架空]オンライン申込フォームが表示されない 対象: [架空]さくら市民ポータル 申込システム 検知: 6/20 10時頃 監視アラートと利用者からの連絡で把握 状況: トップ画面は表示されるが申込ボタンを押すとエラー 影響: 新規の申込ができない 既存データへの影響は確認中 対応: 担当が原因調査中 アプリ再起動を試したが復旧せず 原因: 未特定 直前にバッチ処理が動いていた可能性あり(未確認) 次: 11時を目安に状況を再連絡する
2
書く

次の指示で一次報告のドラフトを作らせます。「未確定は断定しない」と明示しているのが重要です。

あなたは障害発生時の一次報告を書く担当者です。 次の事実メモから、社内の関係者向けの一次報告ドラフトを作ってください。 条件: - 「発生事象」「影響範囲」「現在の対応状況」「次回連絡の目安」の順に簡潔に - 確定していない原因は断定せず「調査中」と書く - 落ち着いた事務的なトーンで、煽らない - 件名も一行で提案する 事実メモ: (ここに上のメモを貼り付け)
3
実行する

返ってきたドラフトで、原因が断定されていないかを真っ先に確認します。AIが「バッチ処理が原因です」と言い切っていたら危険信号です。「原因はまだ未確認なので、可能性として触れる程度に直して」と指示します。事実と推測の線引きを人が引き直すのが、この演習の最重要ポイントです。

4
振り返る

急ぎの連絡文をゼロから書くのに普段どれくらい時間がかかっていますか。下書きをAIに任せて、自分は事実確認と判断に集中する。この分担が自分の業務で効きそうか、メモしてください。完成例は hints/step03_incident_example.html にあります。

カスタム テクニックで自分用にカスタム ― メタプロンプト

急ぎの報告ほど情報が足りません。AI自身に「何が足りないか」を先に質問させると、書き始める前に抜けに気づけます。これがメタプロンプトです。宛先を変えてトーンを作り分けるのも効きます。

■ メタプロンプト(書かせる前に送る) この一次報告を書くために、あなたが追加で知りたい情報を 3つまで質問してください。まだ本文は書かないでください。 ■ 宛先を変える 同じ事実メモから、(1) 社内の技術者向け と (2) 利用者向けのお知らせ の 2通りを作り分けてください。利用者向けは専門用語を避けてください。

試すこと:まずAIに不足情報を質問させ、答えてから書かせると、いきなり書かせたときより抜けが減ります。宛先を変えて、同じ事実でもトーンが変わることを確かめてください。

発展課題3 復旧後の事後報告への変換

ねらい:一次報告として出したドラフトを、復旧完了後の事後報告に書き換える練習です。同じ素材から用途違いの文書を作る流れを体験します。

やること:演習3で作った一次報告ドラフトを画面に残した状態で、下の追加メモを貼り付けて次のように指示してください。

追加メモ: [架空]さくら市民ポータル 申込システム 復旧後追記 ・11:23 原因特定: 前日バッチ処理の未コミットトランザクションがDB接続を占有していた ・11:35 DBセッション切断後 アプリ再起動で復旧 ・11:40 利用者テストで申込フォームの表示を確認 ・影響範囲: 10:00〜11:35 の95分間 新規申込不可 ・再発防止: バッチ処理終了後のセッション解放チェックをスクリプトに追加する方向で検討中
先ほど作った一次報告に、上の追加メモを反映して事後報告に書き換えてください。 条件: - 「障害概要」「発生日時・復旧日時・影響時間」「原因」「対応内容」「再発防止策」の順に整理する - 原因は確定した事実として断定して書いてよい - 再発防止策はまだ検討中なので「検討中」と明記する - 件名も事後報告として書き直す

確認ポイント:一次報告では「調査中」だった原因が、事後報告では確定した事実として正しく断定されているか。再発防止策が「検討中」と明記されたままか(完了したかのように書かれていないか)を確かめてください。

送信前に必ず人が確認

一次報告は相手の判断に直結します。AIのドラフトをそのまま送らず、事実が正しいか・断定しすぎていないかを確認した人が責任を持って送ってください。

HANDS-ON 05

まとめワーク ― 自分の業務での活用箇所

3つの演習で体験したことを、自分の仕事に引き寄せます。今日の終わりに、自分の担当業務で生成AIを使えそうな箇所を最低ひとつ書き出してください。これが今日の持ち帰りです。

05.1 書き出しシート

次の3項目を、自分の言葉で埋めてください。チャットに貼る必要はありません。手元のメモやテキストエディタに書けば十分です。

1. 今、時間がかかっている文章作業: (例: 月次報告のとりまとめに毎回1時間かかっている) 2. その作業のうちAIに下書きを任せられそうな部分: (例: 箇条書きメモから報告文への整形) 3. 明日いちばん最初に試すこと: (例: 来月の月次報告の下書きを演習1の指示文で作ってみる)

05.2 選ぶときのヒント

頻度

頻度が高い作業

毎週・毎月くり返す文章作業は、少しの時短でも積み上がります。最初の一歩に向いています。

分担

下書きと判断が分けられる作業

下ごしらえはAI、最終判断は自分、と分けやすい作業ほど安全に始められます。

機密

機密が薄い作業

ダミーや一般的な内容で試せる作業から始めると、社内ルールの確認待ちでも手を動かせます。

05.3 自分のプロンプトをAIに磨いてもらう(メタプロンプト)

書き出した「明日試すこと」を実際の指示文にする前に、AIに改善してもらえます。自分の指示文を貼って、こう頼んでみてください。

次の指示文を、より良い結果が返るように直してください。 足りない条件があれば指摘し、改善案も出してください。 指示文: (自分が作った指示文を貼り付け)

返ってきた改善案のうち、役割・条件・読み手が具体的になっている部分を取り込むと、次からの指示が一段良くなります。

小さく始める

いきなり全部の業務を変える必要はありません。ひとつの作業で「これは楽になった」を実感できれば、次に広げる判断ができます。

HANDS-ON 06

指示を上手に書くための型

3つの演習で使った指示文には共通の型があります。覚えておくと、別の作業にも応用できます。

要素書くこと
役割誰として書いてほしいかあなたは運用報告を書く担当者です
やること何を作るか次のメモを月次報告に整えてください
条件形・長さ・トーン・読み手3つの見出しに分け、敬体で簡潔に
材料もとになるメモやログ作業メモ:(貼り付け)

この4つを書くだけで、返ってくる文章の精度がぐっと上がります。午前に触れた Microsoft 公式の4要素(Goal/Context/Source/Expectations)も同じ考え方です。完璧でなくて構いません。返答を見て条件を足していけば、往復のなかで仕上がっていきます。

迷ったら役割と読み手から

何を書けばいいか迷ったら、「誰として」「誰に向けて」だけでも先に指定してください。それだけで文章のトーンが安定します。

応用 今日使ったプロンプトのテクニック

3つの演習で足したテクニックをまとめます。型(役割・やること・条件・材料)に、必要なものを一つ足すだけで十分です。

役割

ペルソナを与える

「あなたは〜担当者です」と立場を決めると、トーンと言葉づかいが安定します。

CoT

段階的に考えさせる

「まず洗い出し→次に指摘→最後に清書」と順番を指示すると、抜けが減ります。

メタ

AIに質問・改善させる

「足りない情報を質問して」「この指示を改善して」と、AI自身に手伝わせます。

例示

お手本を見せる

望む形の例を1〜2個見せると、それに寄せた出力が返ります。

SOURCES