月次報告書・運用手順マニュアル・障害一次報告の3つを題材に、チャットAIで下書きを作る流れを体験します。題材のデータはすべて架空です。コピーして自分のチャット画面に貼り付けて使ってください。
3つの演習を順番に進めます。どの演習も「考える → 書く → 実行する → 振り返る」の4段で組み立てています。いきなりAIに丸投げせず、まず自分で考えてから指示を書くのがコツです。
本書の題材はすべて架空のダミーです。練習では必ずこのダミーを使ってください。実際の顧客情報や社外秘の情報をチャットに貼ってよいかは、貴社の社内ルールに従ってください。
各演習の最後に、講師用の完成例(hints フォルダ)と見比べる手順があります。先に完成例を見ると考える練習になりません。自分で手を動かしてから開いてください。
本書はメモを貼り付けて進めますが、Microsoft 365 Copilot ではメモをファイルにして添付しても同じことができます。長い資料ほど「+」からの添付が楽です。
各演習には、基本形ができたあとに役割・段階的な指示(CoT)・メタプロンプトといったテクニックを一つ足して、自分の仕事に合わせて変えてみる一歩を用意しています。まず基本形を動かしてから挑戦してください。
一か月分の作業メモを、お客様にそのまま出せる月次報告の文章に整える演習です。箇条書きを整った文章にする、という生成AIが最も得意な作業から始めます。
お客様が読む月次報告には、何が書いてあると安心しますか。実施した作業、発生した事象とその対応、来月の予定。この3点が入っていれば形になります。下のダミーメモを材料にします。
次の指示文をコピーし、上のメモを続けて貼り付けてチャットに送ってください。役割・出力の形・読み手を指定しているのがポイントです。
返ってきた文章を読んで、気になる点を追加で直します。たとえば「冒頭に一文、全体として安定稼働だったことを足して」「専門用語をお客様にも分かる言葉に」と続けて頼んでみてください。一度で完成させず、2〜3回往復するのが狙いです。
自分が普段書いている報告書のうち、このやり方で下書きを作れそうなものはありますか。思いついたら手元にメモしてください。完成例は hints/step01_report_example.html にあります。
基本の指示文が動いたら、テクニックを一つ足して自分用に変えてみましょう。役割(ペルソナ)を変えると文章のトーンが、出力形式を指定すると見た目が変わります。
試すこと:役割・トーン・出力の形をどれか一つ変えて再送し、同じメモでも文章の硬さや詳しさがどう変わるかを見比べてください。自分の現場に一番合う型を見つけるのが狙いです。
ねらい:同じ形式の月次メモが複数月分あるとき、月をまたいだ傾向をAIに読み取らせる練習です。
やること:下の7月分ダミーメモを、演習1で使った6月分メモと一緒に貼り付けて、次のように指示してください。
確認ポイント:ディスク使用率の推移(80%→62%→70%→55%)が正しく読み取られているか、改善傾向のコメントが数値に基づいていて憶測になっていないかを確かめてください。
長すぎる、固すぎると感じたら「半分の長さで」「もう少しやわらかい言い回しで」と頼みます。逆に内容が薄ければ「各項目に一言ずつ補足を足して」と指示します。
頭の中にある手順や、口頭で引き継いでいる作業を、誰でも読めるマニュアルの草案にする演習です。AIに手順の文章を起こさせ、抜けを補わせます。
引き継ぎたい作業をひとつ思い浮かべてください。今回は題材として「ディスク使用率アラートが出たときの一次対応」を使います。ベテランの頭の中にある手順を、新人でも追える形にするのがゴールです。下のメモが材料です。
次の指示でマニュアルの草案を作らせます。読み手と「抜けを補ってほしい」点を明示しているのがコツです。
返ってきた草案を読み、AIが補った注意点が妥当かを確かめます。「消す前にバックアップは要らないか確認したい」など、現場の判断が要る点が出てくるはずです。間違いや不要な手順があれば「この手順は不要なので削って」と直します。AIの提案を鵜呑みにせず、現場の目で取捨選択するのがこの演習の肝です。
自分しか知らない手順、口頭でしか引き継いでいない作業はありませんか。それをこのやり方で文章化できそうか、メモしてください。完成例は hints/step02_manual_example.html にあります。
手順書のように抜け漏れを防ぎたいときは、いきなり清書させず考える順番を指示すると精度が上がります。まず洗い出し、次に抜けの指摘、最後に清書、と段階を踏ませる書き方です。
試すこと:段階を踏ませたときと、いきなり清書させたときで、抜けの拾い方がどう変わるかを比べてください。読み手を変えると、同じ手順でも書き方が変わります。
ねらい:演習2で作った手順書の構成を型として使い、別の一次対応にそのまま当てはめる練習です。指示の「流用」を体験します。
やること:演習2で使った指示文を再利用し、材料部分だけ下のダミーメモに差し替えて送ってください。「前提・準備」「手順」「完了の確認方法」「うまくいかないときの連絡先」の構成はそのまま維持してください。
確認ポイント:ディスク手順とメモリ手順で微妙に違う点(確認コマンド・しきい値・対象プロセスの特定方法)が正しく書き分けられているか確かめてください。一字一句コピーでなく題材に合った形になっているかが判断の軸です。
AIが足した注意点は、それらしく見えても現場の実態と違うことがあります。手順書として確定する前に、必ず実際の作業を知る人が確認してください。
障害が起きた直後、限られた事実から関係者向けの一次報告を素早く出す演習です。急いでいる場面ほど、下書きを速く作れる効果が効いてきます。ただし事実の確認は人が行う前提を崩しません。
一次報告で関係者が知りたいのは、何が起きたか・影響範囲・今どうしているか・次にいつ続報が出るか、の4点です。確定していないことは「調査中」と書く。憶測で原因を断定しないのが鉄則です。下のメモを材料にします。
次の指示で一次報告のドラフトを作らせます。「未確定は断定しない」と明示しているのが重要です。
返ってきたドラフトで、原因が断定されていないかを真っ先に確認します。AIが「バッチ処理が原因です」と言い切っていたら危険信号です。「原因はまだ未確認なので、可能性として触れる程度に直して」と指示します。事実と推測の線引きを人が引き直すのが、この演習の最重要ポイントです。
急ぎの連絡文をゼロから書くのに普段どれくらい時間がかかっていますか。下書きをAIに任せて、自分は事実確認と判断に集中する。この分担が自分の業務で効きそうか、メモしてください。完成例は hints/step03_incident_example.html にあります。
急ぎの報告ほど情報が足りません。AI自身に「何が足りないか」を先に質問させると、書き始める前に抜けに気づけます。これがメタプロンプトです。宛先を変えてトーンを作り分けるのも効きます。
試すこと:まずAIに不足情報を質問させ、答えてから書かせると、いきなり書かせたときより抜けが減ります。宛先を変えて、同じ事実でもトーンが変わることを確かめてください。
ねらい:一次報告として出したドラフトを、復旧完了後の事後報告に書き換える練習です。同じ素材から用途違いの文書を作る流れを体験します。
やること:演習3で作った一次報告ドラフトを画面に残した状態で、下の追加メモを貼り付けて次のように指示してください。
確認ポイント:一次報告では「調査中」だった原因が、事後報告では確定した事実として正しく断定されているか。再発防止策が「検討中」と明記されたままか(完了したかのように書かれていないか)を確かめてください。
一次報告は相手の判断に直結します。AIのドラフトをそのまま送らず、事実が正しいか・断定しすぎていないかを確認した人が責任を持って送ってください。
3つの演習で体験したことを、自分の仕事に引き寄せます。今日の終わりに、自分の担当業務で生成AIを使えそうな箇所を最低ひとつ書き出してください。これが今日の持ち帰りです。
次の3項目を、自分の言葉で埋めてください。チャットに貼る必要はありません。手元のメモやテキストエディタに書けば十分です。
毎週・毎月くり返す文章作業は、少しの時短でも積み上がります。最初の一歩に向いています。
下ごしらえはAI、最終判断は自分、と分けやすい作業ほど安全に始められます。
ダミーや一般的な内容で試せる作業から始めると、社内ルールの確認待ちでも手を動かせます。
書き出した「明日試すこと」を実際の指示文にする前に、AIに改善してもらえます。自分の指示文を貼って、こう頼んでみてください。
返ってきた改善案のうち、役割・条件・読み手が具体的になっている部分を取り込むと、次からの指示が一段良くなります。
いきなり全部の業務を変える必要はありません。ひとつの作業で「これは楽になった」を実感できれば、次に広げる判断ができます。
3つの演習で使った指示文には共通の型があります。覚えておくと、別の作業にも応用できます。
| 要素 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 役割 | 誰として書いてほしいか | あなたは運用報告を書く担当者です |
| やること | 何を作るか | 次のメモを月次報告に整えてください |
| 条件 | 形・長さ・トーン・読み手 | 3つの見出しに分け、敬体で簡潔に |
| 材料 | もとになるメモやログ | 作業メモ:(貼り付け) |
この4つを書くだけで、返ってくる文章の精度がぐっと上がります。午前に触れた Microsoft 公式の4要素(Goal/Context/Source/Expectations)も同じ考え方です。完璧でなくて構いません。返答を見て条件を足していけば、往復のなかで仕上がっていきます。
何を書けばいいか迷ったら、「誰として」「誰に向けて」だけでも先に指定してください。それだけで文章のトーンが安定します。
3つの演習で足したテクニックをまとめます。型(役割・やること・条件・材料)に、必要なものを一つ足すだけで十分です。
「あなたは〜担当者です」と立場を決めると、トーンと言葉づかいが安定します。
「まず洗い出し→次に指摘→最後に清書」と順番を指示すると、抜けが減ります。
「足りない情報を質問して」「この指示を改善して」と、AI自身に手伝わせます。
望む形の例を1〜2個見せると、それに寄せた出力が返ります。